【戸定歴史館館長*齊藤洋一さんインタビュー】#丘のうえのひとたち3

今回は、“丘のうえの人たち”と題して、科学と芸術の丘に関わる方々のインタビューをお届けします。第3回目のゲストは、メイン会場となる戸定邸を管理する松戸市戸定歴史館の館長、齊藤洋一さんのインタビューです。

<戸定邸>

戸定邸は、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の弟である徳川昭武の住まいとして建てられ、現在は全国で唯一、一般公開されている徳川家の住まいです。建物は国の重要指定文化財に、庭園は国の名勝に指定されています。これまでにもアーティストやクリエイターとコラボした様々なイベントを行っており、松戸市内外の多くの方々に親しまれてきました。

戸定邸➣https://www.city.matsudo.chiba.jp/tojo/

                              

 

戸定歴史館館長*齊藤洋一さん(右写真)

“文化財とは何か?”――変化する時代の中で、原点を常に問い続ける

――戸定邸では歴史的な文化施設として市民の方に開放するだけでなく、様々なイベントを行っています。どうしてそのような活動をされているのですか?

 

文化財を扱うという事は、文化財とは何か、という原点を常に考え続けないといけません。 
世界遺産や、国宝はそれだけでも一般にはすばらしいと言われます。では、それが成立するのはなぜなのか?なぜ文化財は重要で、残さなければいけないのか?


文化財が残っているということは、そこには一定の普遍的な価値があり、しかも時代が変わっても、新しい意味や価値を生み出し続けているはずです。 

大切なことは、今における価値は何なのかということです。文化財について考える場合、過去、現在、未来の3点を考えていくことが必要になります。

 そのように幅広い視点で活動する場合、色々な分野で活躍している方たちとコラボすることで、現代における新しい意味を発見することができると考えています。

おそらく今回、フェスティバルへお声がけをいただいたのは、日頃からそのよう意識で広く活動を行っていたからなのかなと思いますね。


文化財に色々なものさしをあて、新しい可能性を見つける。

――今回、戸定邸で、科学と芸術の丘を開催したいという話がきたとき、どのように感じられましたか?

 

戸定邸では以前にも、現代アートの作家さんや音楽家とコラボレーションした企画などを行ってきましたが、今回のフェスティバルはまた違った視点で、文化財に色々なものさしをあててみるということだと思っています。

例えば 長さを図る単位にも、インチやセンチがあったり、尺や寸がある。ものさしを変えるということは、その瞬間は何かが崩れてしまうリスクがあるけど、過去から今に伝わるようなすばらしいものは、そのくらいダイナミックですさまじい変化を経験してきています。 

このフェスティバルは、若い方が中心となって運営していますが、同じ世界に生きていても、世代によって、見えている世界は全く違う。つまりものさしが違うわけです。
その違いをどう組み合わせていき、若い人たちが主語となって、ここでどういうものを作っていくことができるのか、新たな可能性を見出してほしいと思っています。

 

コラボレーションする上では、それぞれが持っている独自のDNAをどのように繋げるのかがとても重要です。ただ組み合わせただけでは、薄っぺらいものになってしまう。
価値の軸をしっかりとお互いに持って、その刃をまじえないと、新しい火花は散りません。だから、アーティストにはアーティストとして徹底してほしい。
その上で一緒に何ができるのかを探っていくと、結果的にそれはお互いにとって唯一無二の関係になるはずなんです。

 

――なるほど。では、戸定邸としての価値の軸はどのようなところにあるのでしょうか?

それは、戸定邸にふれた人たちが、自分自身でなければ見いだせないものを必ず見つけるということですね。その人にとって、この場における唯一無二のものは何なのか?戸定邸でなければできない新しい創作、表現を生み出してほしいです。

もう一つは、そうして生まれたかけがえのないものを、繰り返していく必要があるということ。そこで文化財の保存という概念がでてきます。自分たちが予想もできないような新しい価値、あるいは新しい役割を、時代と社会が変わっても、果たしていくことが必要です。

文化財は、建築当時から文化財だったわけではなく、建てた際の目的はすでに完了してしまっているものがほとんどです。それでもなお、新たな価値を持っているから、“文化財”と言われるわけです。単純に“文化っていいよね”という言葉の先にあるものを、色々なものさしを当てはめて、考えていくことが大切だと思います。


自己に対する問いが、街の価値の発見につながる。

――この時代の中でこそ、そして松戸という地域の中でこその役割を見つけていく、ということですね。

 

 はい。ここは自治体の博物館なので、地域の方たちに支えていただいているわけですよね。だから、博物館としての地域における役割を考えていく必要がある。そのような意味で、博物館というのは、過去からの大きなエッセンスと現代を引き合わせる場だと言えます。

 

――では最後に、ブログを読んでくださっているみなさんにひと言お願いします!

 

松戸は、文化財や世界遺産がたくさんある京都のように、誰もが一定のイメージを持っているような街とはタイプが違います。
その分、街の中に何を発見してどう作っていくか、自らが戸定邸と関わり、新しい価値を生み出していく可能性はとても大きいと考えています。

既存の権威にすがろうとすると、街の価値は見つけにくくなりますが、「自分自身がこの街に生きて、暮らしているとは、どういうことか」。結局は、そのような自己に対する問いから、街の価値は見えてくるのではないかと思います。なので、自分なりに戸定邸に関わってみて、新たな可能性を見つけていただきたいと思います。

 

 

――ありがとうございました!

 

ライター:まきのまあや
東京大学多文化共生・統合人間学コース在学
シンガーソングライター/ライター

多様ないのちがともに生きる“共生”をテーマに、東京大学で研究をしながら音楽活動や文筆活動、イベント企画などを行う。音楽やことばを通して、“みんなの広場”をデザインしたい。

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